ディオニュソスの旅の始まりは、狂気に他なりませんでした。では、酒神が人々にもたらすものは、喜びか、はたまた狂気か。
楽しいことや美味しいものも、行き過ぎては後悔することになりかねません。何かを失ってから狂気の沙汰と振り返っても、もう遅いのです。
過剰摂取にはくれぐれもご注意を。

ゼウスの腿から誕生を果たしたディオニュソスでしたが、父の庇陰も虚しくヘラに目を付けられ、長い苦難の道を歩むことになります。彼は、ヘラによって育ての親に狂気を吹き込まれ住処を失い、ニンフたちに匿われて成長した後、これまたヘラのせいで狂気に侵され、転々と地上を彷徨います。この間、ぶどうの木を発見したディオニュソスは、ぶどう作りや酒の神として、熱狂的な信者を獲得していきます。

ディオニュソスの異名バッコスが転じてローマ神話名バッカスとなりましたが、 « être dans la gloire de Bacchus »(バッカスの栄光の中にいる)と言えばすなわち「酔っている」という意味になります。酒の神を崇める儀式となればその狂乱の程は恐ろしいもので、今日 « une bacchanale »(バッカス祭)は単に「乱痴気騒ぎ」を意味する言葉ですが、伝わるところ数千人もの告発者を出す危険な祭りであったようです。
