I-12. モルぺウスの腕の中で

夢の神はしばしば眠っている姿で表されます。人間にどんな夢を見せたものか、彼自身が見る夢の中で思案しているのかのようです。

自分がしている仕事は何たるかをその身でしっかり知っていることが、仕事を上手くこなすコツなのでしょう。

休む時はしっかり休むのも大事ですね、休息もまた恵みなのですから。

人間の夢を形作るのは、眠りの神ヒュプノスの3人の子供たちの役割です。動物を見せる「威嚇者」ポベトル、無生物を見せる「仮像者」パンタソス、そして人間の姿を見せる「造形者」モルペウス。

René-Antoine Houasse《イリスが近づいて目を覚ますモルペウス》1688-1689

神々の伝令を務める虹の女神イリスに起こされ、眠たげな顔に腕をかざすモルペウスの背には、大きな翼が見えます。これから彼は、この翼で音もなく羽ばたき、イリスに頼まれた夢の神としての役目を果たしに行くのです。

「ぐっすり眠り込んでいる」ことを、 « être dans les bras de Morphée »(モルペウスの腕に抱かれている)と表現します。なんだか心に残る夢を見たなら、それは神の腕に包まれて寝ていた証なのかもしれません。