命の煌めきは儚く、それゆえに一層愛おしいもの。
望むならば、胸の裡に想いは香り続けるでしょう。
日毎、可憐な花弁が開くように。

人間の恋愛にあれこれちょっかいを出したり手助けしたりするのが権能のアフロディテですが、自身が人間を愛してしまうことも。その相手がアドニスでした。美の女神が愛した程なのですから、その美しさは相当なものだったのでしょう。« Beau comme un Adonis »(アドニスのように美しい)とは、先述した« C’est un vrai Apollon »(真のアポロンだ)と同様に「非常に美しい」男性を形容する表現ですが、アフロディテはアドニスをあくまで養子としたのですから、よりあどけない美しさをいうのかも知れません。

アフロディテは同じくアドニスに惚れ込んだ冥府の妃ペルセポネと話を着けて、決まった季節に少年を自分の元に来させて可愛がり、幸せな日々が続いていましたが、悲しい終わりは突然訪れました。ある時、アフロディテと恋仲であったアレスか、はたまた夫のヘパイストスだったでしょうか、とにかく嫉妬に狂った誰かが少年を猪に襲わせしめ、アドニスは死んでしまったのです。この時流れたアドニスの血からはアネモネが、アフロディテの涙からはバラが生じたといいます。
