目には目を、歯には歯を。
ならば、愛には愛を返せたなら、どんなに良いでしょう。
悲しみがこだますることのないように…、そう上手くはいかないのが人間だと、わかってはいるのですけれど。

美青年ナルシスの「自己陶酔者」« un narcisse »(ナルシス)ぶりは筋金入り。自身の美しさを誇り、言い寄る者すべてをはねつけます。可哀想なニンフのエコーもそのひとり。恋に落ちた時、エコーはおしゃべりをヘラに咎められ、他人のせりふの末尾の言葉を真似て返すことしか出来ない身でした。そんな彼女をナルシスが受け入れるはずもなく、悲しみに打ちひしがれて姿を失い、声だけが残ったニンフは「木霊」« un écho »(エコー)となり、今なお、恋人たちのささやかな恋煩いを繰り返し唱えています。

ナルシスには、復讐の女神から罰が下りました。彼は他の者が彼を愛したのと同様に彼自身を愛することが出来るけれども、他の者の愛が受け入れられなかったのと同様に、彼の愛が受け入れられることはないのです。こうして水面に映った自身の影に恋い焦がれることとなったナルシスは、みるみるやせ細り、やがて息絶えました。そこにはただ、一本の水仙(un narcisse)が残ったといいます。
