II-11. オデュッセイア

一難去ってまた一難。

人生は長い旅路のようなもので、理不尽に見舞われることも多々あるでしょう。

それでも乗り越えていけるのは、帰る場所があってこそです。

ホメロスのもうひとつの作品とされる『オデュッセイア』は、トロイア戦争を描いた『イリアス』の続編にあたります。物語の主人公はイタケの王オデュッセウス。ギリシア勢きっての知将で、あのトロイの木馬作戦を考案し、ギリシアを勝利に導いたのも彼でした。

叙事詩が描くのは、この英雄の帰国譚です。10年にわたる戦争が終結した後、妻の待つ故郷を目指して出航したオデュッセウスですが、彼が幾多の困難を乗り越えて国にたどり着くまでにはさらに10年もの年月を要することになります。というのも、旅の途中でひとつ目巨人ポリュペモスに捕らえられた英雄は、やはり巧みに逃げおおせますが、その際に巨人の目を潰して侮辱したために、巨人の父である海神ポセイドンの根深い恨みを買ったのでした。

Jacob Jordaens《ポリュペモスの洞窟にいるオデュッセウス》17世紀初頭

彼の経験したような「波乱万丈の冒険や人生」を、作品名をとって « une odyssée »(オデュッセイア)と表すことがあります。