I-8. 復讐の女神たち

愛の女神と時を同じくして、この世に生まれたものがあります。

何事もすんなり「めでたし、めでたし」とは行きにくいのが世の常なのでしょう。思わぬところから舞い込んだ幸運には、喜ばしくないおまけも付いてくるかもしれません。

飛びつく前に、今一度確認を。

ローマ神話におけるフリアエは、ギリシア神話に登場する復讐の三女神エリニュス、すなわち容赦ない憎しみのアレクト、殺人の復讐者ティシポネ、嫉妬のメガイラに相当します。切り落とされたウラノスの男根からこぼれた精液からアフロディテが生まれた一方で、同時に飛び散った血液からはこの女神たちが生じたのでした。

William-Adolphe Bouguereau《復讐の女神たちに責められるオレステス》1862

« une furie »(フリアエ)と言えばそれだけで「性悪女」を意味し、先述した « être une Vénus »(ヴィーナスである)とは対になる表現だと言えますが、こちらはどちらかというと性格について言及しています。3人の中でも特に嫉妬の女神メガイラをとって « C’est une vraie mégère »(真のメガイラだ)と言うことが多いようです。「気難しく怒りっぽい、がみがみうるさい鬼婆」といったところでしょうか。