I-5. ヴィーナスの島へ

女神アフロディテに相当するのが金星です。この「愛」と「美」を司る星は、創造的感性の指標にもなります。

アイデアはふとした拍子に思いも寄らないところから生まれ出るものです。その煌めきは、人々の心を喜びで結びつける力になり得るでしょう。

William-Adolphe Bouguereau《ヴィーナスの誕生》1879

愛と美の女神アフロディテは、ローマ神話のヴィーナスと同一視されます。« être une Vénus »(ヴィーナスである)ことは、すなわち「美しい女性である」ことを指す、わかりやすい言い回しです。

この美しい女神は、ギリシア神話の中でも風変わりな誕生譚を持っています。というのも、クロノスがその父ウラノスを倒す際に切り落とした男根からこぼれた精液が、海の泡となり、そこからアフロディテが生まれたのです。そして彼女が初めて地に足をつけた場所が、キティラ島でした。

Antoine Watteau《シテール島への船出》1717

Kythira(キティラ)島はフランス語表記だとCythère(シテール)島になります。アントワーヌ・ヴァトーがこの島へ出で立つ恋人たちを描いていますが、L’embarquement pour Cythère(シテール島への船出)というこの画のタイトルは、そのまま « s’embarquer pour Cythère »(シテール島へ乗り出す)という言い回しになっています。「恋人と会う約束がある」ことを指し、特にそれが初めての場合に用います。

恋人たちに、女神の加護のあらんことを。